
会社員の時は会社が加入する社会保険に入りますが、フリーランスは自分で公的な健康保険に加入しなければなりません。そのため、病気やけがなど万が一の時に困らない保険の知識を蓄えておきましょう。
また自分に合った保険料や種類を選ぶために、保険料を安く済ませるための対策について知っておくと便利です。
医療保険以外にも、リスクに備えて加入しておきたい保険や、フリーランスの老後を支えるための保険についても解説します。
- フリーランス向けの健康保険について
- 国民健康保険組合の加入する手段もある
- 小規模共済への加入メリット
- 老後を支える国の制度がわかる
フリーランスが入れる健康保険
日本では国民は公的医療保険に加入する義務があります。
会社員の時は会社が加盟している健康保険に加入することになりますが、フリーランスの場合は自分で公的医療保険に入らなければなりません。フリーランスが入れる健康保険の種類について知っておきましょう。
国民健康保険
国民健康保険は、都道府県や市町村が保険者になって運営されている公的医療保険制度です。一般的にアルバイトや自営業の方は国民健康保険に加入します。
保険料は住んでいる地域や所得によって異なるため、お住いの地域の役所で確認を行いましょう。
国民健康保険には以下の保険料が含まれています。
- 医療分保険料(加入者の医療費)
- 支援金分保険料(後期高齢者医療制度)
- 介護分保険料(介護保険)
上記の3つの保険を合計した分が保険料になります。
会社員時の保険を任意継続
会社員からフリーランスになった方は、会社員で加入していた保険を任意で継続することができます。2年という期間限定の保険ですが、以下のメリットがあります。
- 扶養家族の保険料を払わなくて済む
- 人間ドッグ割引など福利厚生等が引き続き受けられる
このようにメリットがありますが、一方で注意点もあります。
- 保険料は会社が半額負担していた分を自分で負担するため実質2倍
- 退職までに2か月以上継続していたかが条件
- 必要書類を退職後20日までに郵送する必要がある
- 配偶者が無職の場合国保を支払う必要がなくなる
- 将来の年金額が増える
- 出産手当金や傷病手当など福利厚生サービスが増える
メリットデメリットを考慮した上で、任意継続するかを決めましょう。
家族の扶養に入る
配偶者が勤務先の健康保険に加入している場合は、その方の扶養に入るという選択肢があります。条件があり、税金控除前の総収入が130万円以下と限定的です。仕事が軌道に乗るまでの間、低収入が予測される場合には、検討してみるのも良いでしょう。
自分に合った保険料選びや保険料を安くする方法
自分に合った保険料をどのように選んだらよいか迷う方は、保険料を安くする対策について知っておくと便利です。
保険料選びのポイントを見ていきましょう。
国民健康保険組合に入る
市区町村が運営する国民健康保険以外にも、国民健康保険組合に加入するという選択肢があります。
国保が健康保険法に基づく医療保険者であるのに対し、国民健康保険組合は同種の事業や業務の従事者が組合員となり、組織されています。
収入にかかわらず保険料が一定で、家族の収入が130万円以上あっても同一世帯であれば被保険者になれます。
そのため高収入のフリーランスは国保に入るよりもお得になる場合があります。
参考:国保組合とは(健保との違い・メリット)|全国土木建築国民健康保険組合
保険料は加入する組合によって異なります。
保険料の安い地域に住む
国民健康保険は都道府県や市町村によって保険料が異なります。同じ都道府県の中でも自治体によって金額に差があります。
フリーランスで仕事場を選ばず活躍できる方は、住む場所を保険料の安い地域にする、という対策が取れるでしょう。
補償がある保険サービスを選ぶ
例えば会社に勤めていてミスがあり、取引先とのトラブルが起きた場合の損害賠償は会社全体の問題として対処します。しかしフリーランスの方は自分で対応しなければなりません。
また思わぬ病気やケガで動けなくなった場合収入が減少するので、それらを補填してくれる保険があると助かります。
民間の保険サービスの中には、フリーランス向けに事故や業務過誤を保証するサービスを運営している所があります。他にもオプションで病気など動けなくなった際の、所得補償制度が設けられている所もあるので、チェックしてみましょう。
保険料はクレカや電子マネーを活用する
お住いの自治体によっては、国民健康保険の支払いにクレジットカードや電子マネーを選択することができる地域があります。
電子マネーではチャージでポイントがついたり、クレジットカードでポイントを貯めて節約を行うと良いでしょう。
法人化する
フリーランスが法人化を行うと、社会保険に加入することになるので国民健康保険を支払わなくて済みます。保険料がかかるのは変わりませんが、法人化することで得られるメリットもあります。
国保は世帯人数で保険料が高くなる場合がありますが、社会保険の場合は人数問わず被保険者の収入のみで保険料が決まります。そのため家族が従業員で多くいるケースは有利になります。
他にも以下のようなメリットがあります。
法人化すると所得税が法人税に変わり、自分の給与が経費になるなど変更点が多いので、様々な観点から検討する必要があります。
国民健康保険は免除措置がある
災害や病気など何らかの理由で働けなくなり、大幅に所得が下がると保険料が支払えなくなる場合もあります。
市町村の窓口で相談、申請を行えば保険料の免税措置が受けられる可能性があります。保険料の負担を感じる場合は相談してみましょう。
倒産や損害賠償に備えた保険
フリーランスの方は病気など健康に対する保険以外にも、倒産や損害賠償に備えた保険も知っておく必要があります。どんな制度があるのか解説します。
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティー共済)
経営セーフティー共済は、国が全額出資している中小企業基盤整備機構が運営する共済制度です。
取引先が倒産した影響で自分の会社も倒産危機に陥った場合、掛け金の10倍(上限8000万円)まで借り入れが可能になります。掛金金額は5000円から選ぶことができ、掛け金はフリーランスの場合必要経費に算入できます。
また掛け金を1年以上納めていれば、掛金総額の8割以上が解約手当金として受け取れます。
小規模企業共済
小規模企業救済は、国の機関である中小企業基盤整備機構が運営している制度のことで、フリーランスが退職後のための資金を積み立てられる退職金制度です。1年間に支払った掛け金全額を控除額にでき、節税のメリットがあります。
掛金は1000円から選ぶことができ、共済金の受け取りは一括、分割自由に選べます。
中小企業退職金共済
フリーランスの方は小規模企業救済に加入しますが、従業員がいる場合は従業員向けに中小企業退職金共済という制度が設けられています。独力で退職金制度を設けることが難しい自営業の方が、この制度を設けることで従業員の退職後を支えることができます。
原則として従業員全員の加入が必須となっています。
国の助成金があるため、従業員の実質負担額が少なく済みます。
フリーランスの老後を支える保険
会社員の方は会社で厚生年金に加入しますが、フリーランスの場合は国民年金保険に加入しなければなりません。
他にもフリーランスの老後を支える年金保険はいくつか選択できるので、保険の種類を知っておきましょう。
国民年金保険
会社員をやめフリーランスになった方は第一号被保険者になり、国民年金保険に加入します。
保険料は毎年改定が行われ、保険料が決まります。令和3年度は16610円です。
配偶者がいる場合は、同じく国民年金保険に加入する必要があります。
前納することで割引されるのでお得な制度もあるので確認しておきましょう。
付加年金
付加年金とは国民年金保険の定額保険料に月額400円上乗せして納付することで、将来もらえる年金額を増額できる制度です。
額は200円×納付月数が上乗せされますが、国民年金基金に加入している場合はこの制度は使えません。
国民年金基金
国民年金基金とはフリーランスの方のための、国民年金に保険料を上乗せできる制度です。
特徴は掛金全額が所得控除の対象になるので、フリーランスの方が上乗せの年金を検討するならおすすめの制度です。
掛金が一定額ですが、自己都合ではやめることができないため加入前に確認しておきましょう。
個人年金保険
民間の保険会社には、積み立て型の個人年金保険があります。
個人年金保険は生命保険と同様に、控除の対象になるため節税のメリットがあります。
個人年金保険の契約には税制適格特約というものがあり、それを付加すれば生命保険控除とは別枠で控除することができます。
そのため生命保険控除の控除額が上限に達している場合でも、控除額を増やす対策が取れます。
個人型確定拠出金
個人型確定拠出金とは自分で作る年金制度の事で、加入者が自分で決めた金額を積み立てていける年金のことを言います。積立金額全額が所得控除の対象になり、節税対策になります。
また受け取る時にも年金に1500万円までは課税されません。
掛金拠出の休止はできますが、60歳までは解約ができません。投資信託なので手数料がかかります。
資金に余裕があるフリーランスの方はメリットが大きいので検討してみましょう。
まとめ
健康保険と年金保険は、日本では加入が義務付けられています。フリーランスの方は会社員を退職したら、加入する健康保険と国民年金について把握しておきましょう。
健康保険は国保以外にも、国民健康保険組合や家族の扶養に入るなど、いくつか選択肢があります。
また年金についても付加年金を追加することもできるので、老後の資金の積み立てに利用しましょう。
その他倒産や損害賠償リスクに備えた保険サービスが様々あるので、利用して安全性を高めてください。
補償は多ければ良いというものではなく、自分に合った保険料を知るためにも、保険料を安くするコツも知っておくと便利でしょう。
フリーランスをはじめとした個人事業主のローンの組みやすさや保険についてなど、社会的地位の側面から解説しています。会社員から個人事業主になることで様々な変化があるので、知っておいて損はない内容になっています。